著作権譲渡の契約の際に、
「全て」との文言では足らず、
必ずカッコで記載してほしいと警告している条文である、
27条と28条のうちの、28条の方のお話をさせてください。
「本著作物に関する全ての著作権(著作権法第27条、同第28条に定める権利を含む)を譲渡する。」
【著作権法第28条】
(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
この条文は、ぶっちゃけて言うと、
2次創作をした場合、
その2次創作者だけではなく、
原作者も権利者になりますよ。
というものです。
例を合わせて書くと、
原作者が小説を書き、映画監督がその小説を基に映画化した場合の、その映画も原作者の著作物になるというケース。
原作者が文章を作って、その文章に基づきその小説を翻訳した場合の、その翻訳も原作者の著作物になるというケース。
原作者がストーリを考え、漫画家が漫画をそれに基づいて書いた場合(2次漫画と言っちゃいます)の、その漫画も原作者の著作物になるというケース。
まあ、原作者にしてみれば、自分の著作物が基になったのであるから、それから生み出されたものは、全て私のものということだと思います。
ただ、以上の例では、
原作者は、後の創作時には、”何らの関与もしていない”ということが共通しています。
極論を言ってしまうと、原作者は死んでいても権利者になるのです。
最後の漫画の例でいえば、その2次漫画のキャラクタの絵と設定だけを拝借して、全く別のストーリを別の漫画家さんが書いた場合には、原作者は何もしていない状態です。
しかし、例えそうだとしても、著作権法第28条は、原作者にも著作権の発生を認めているのです。
つまり、ストーリは全然面白くないけど、すごいCG付けて売れちゃいましたという映画で、映画化に100億円かかっても、その権利は映画監督のみならず、原作者にも発生するということです。
また、ストーリを作成した原作者と、それをもとにしてキャラクタ原画を作った人がケンカしてしまったら、
原作者は、ここぞとばかりに自分の権利を主張して、差止め請求をしてくるかもしれません。
いくら魅力的なキャラクタのおかげで、そのストーリが恩恵を受けていたとしても、
やっぱり原作者にも著作権法上つよい権利が保障されていますから、
キャラクタ原案を作った人は、かわいい自分のキャラクタを”人質”に取られて、
いろいろと権利を制限されてしまうんです。
驚いちゃいます。
やっぱり、前にお話しましたが、
「文化人や文化人だと思っている人の力ってすごいのね!」とか、
「黒い鼠」ってすごいのねってことなのですね。
さて、次回は、やっと、何度も出てきた「黒い鼠」について
書きたいと思います。
実は、すごい怖いことをこれからしようとしています。
―― 皆様へ知財の専門家としてアドバイス ――
人の著作物を利用して、新しい著作物を作るのは、やめておいたほうが良いです。
原作者は、何もしていないのに、貴方の著作物に貴方と同じ権利が、
あることになって、いろいろと、面倒なことになります。
もし、どうしても二次創作をしようとするならば、
相応の契約書で、しっかりと取決めをしておきましょう。
なお、著作権法の27条、28条についてもう少し知りたい方は↓こちら